• 【水樹奈々】 20年では収まりきらないほどの 濃厚な時間を過ごしている


【水樹奈々】
20年では収まりきらないほどの
濃厚な時間を過ごしている


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    声優デビュー20周年イヤーの水樹奈々が、35thシングル「Destiny's Prelude」と36thシングル「TESTAMENT」を同時リリース。それぞれに自身が声優で参加する人気アニメシリーズのテーマソングを収録し、カップリングには感覚ピエロの提供曲を収録するなど、ますますパワーアップした“今”の彼女が詰まっている。

    「Destiny's Prelude」は水樹史上最難易度のトリプルS

    ──35thシングルの表題曲「Destiny's Prelude」は、劇場版『魔法少女リリカルなのは Reflection』主題歌で、いつものようにたくさんのデモから選ばれたそうですが、どういった部分が気に入ったのですか?

    「まずイントロのピアノの音色にグッと心を掴まれました。私が求めていた『魔法少女リリカルなのは』シリーズに共通してある女神様のような、やさしさと芯のある強さが感じられて、この先のメロディーはどんなふうに展開していくんだろう?と。そして、サビを聴いた途端にノックアウトされました。」

    ──分かりやすいメロディーで、すごく耳に残りますね。

    「聴くと心地良いのですが、実際に歌うととても難しくて。緩急が激しく、サーキットでS字カーブを必死にコントロールしながら走るような感覚です。メロディーに委ねながらも、いかにコントロールできるかが勝負なんです。」

    ──コントロールを間違うとコースアウトしてしまう?

    「そうなんです。ドラマチックな曲なので歌い上げたくなるのですが、そこをあえて裏声で優雅に歌うことで切なさや儚さがより表現される。攻めすぎず、でも感情は熱い。内包した情熱を、どれだけ表現できるかという難しさがありました。」

    ──ブログでは水樹さん史上最難易度のトリプルSだと。

    「『なのは』シリーズの過去曲で難しいものはたくさんありますが、その中でも3本指に入ります。ちなみに1位は「Sacred Force」。力技でいけそうな曲ですが、音の飛び方が非常に意地悪とも思える作りなんです(笑)。2位は「PHANTOM MINDS」。ブレスのポイントがかなりシビアで、それにもかかわらず酸素を多く必要とする高音域を攻める曲です。「Destiny's Prelude」はそれらに続く難曲でした。」

    ──作詞は今までとは少し違う視点で書かれていますね。

    「あえて視点を絞らず、複数の登場人物に感情移入していただけるように書いたので、これまでの主要キャラクターふたりを中心に書いたものとはテイストが違います。あと、前後編で完結する作品の前編の主題歌なので、葛藤する精神描写が多くなりました。MVでもその葛藤をイメージして黒のドレスを着て歌っています。いつもより前向きな言葉が少ないので、そういう部分でも今までとの違いを感じていただけると思います。」

    ──カップリングは、同じく劇場版『魔法少女リリカルなのは Reflection』の挿入歌の「Invisible Heat」。

    「イントロから泣けます(笑)。強さもあるけど、やさしさや温かさがメインに感じられる曲です。映画のアフレコを終えた上で、改めてキャストのみなさんの声を脳内再生し、台本を読みながらデモテープを聴いて一番はまる曲を選んだので、より映像とのリンク感が強いものになりました。個人的にとても思い入れのある、この映画で一番観てほしいシーンで流れるので、ぜひ劇場でも聴いてほしいです。」

    ──そして、3曲目は感覚ピエロの横山直弘さん作曲の「Poison Lily」。すごくインパクトのあるロックチューンですね。

    「以前、動画サイトで感覚ピエロさんの曲を聴いて、メロディーが独特でカッコ良いと気になっていて。今回ご一緒できてとても嬉しかったです。実はこの曲ができる前に“女性が歌う曲だから、少しかわいくしてしまいました”とさわやかな曲が届いて。“いえいえ、遠慮なく、いつもの感じでガンガン攻めたヤツをお願いします!”と再度お願いして、この曲が完成したんです。聴いた瞬間に“キター!!”という感じでした(笑)。」

    ──歌うのも楽しかったでしょうね。

    「本当に楽しかったです。でも、自分でリクエストしておいてなんですが、もう何かの嫌がらせかと思うほど(笑)、難しいメロディーで、2オクターブの間をびっくりするほど急激に行ったり来たりするんです。でも、彼らならではの意外性でめちゃくちゃ気に入っています。」

    ──歌詞は男の子目線の恋愛で、ちょっと難があるという。

    「曲を聴いた時、歳上の女性に翻弄される男子のイメージがバッと浮かびました(笑)。恋に落ちると、会えただけでテンションが上がったり、ちょっとした相手の反応でドーンと落ちたり、勝手にひとりで上がったり下がったりするじゃないですか。その感情の起伏がメロディーの起伏と重なると思って。それで、以前にしほりさんが作詞した「ミュステリオン」という曲がとてもイメージに近かったので、今回ぜひその進化形を!とお願いしました。」

    ──しほりさんは何と?

    「“すごい曲ですね”って(笑)。激しく翻弄される…というところから、相手の毒におかされるということだろうと考えて、タイトルを“Poison Lily”と付けてくださって。しかもしほりさん、人は毒におかされるとどうなるかをすごく調べたらしいです。その上で“Dメロは朦朧とした様子を歌ってほしい”とオーダーもあって。いつもレコーディングでは、しっかり足を踏ん張って歌うのですが、ここは脱力して、ボーっとした雰囲気で歌っています。他にも今までにない表現にチャレンジしているので、ぜひ聴いていただきたいです。」

    デビュー20周年の今も試行錯誤と奮闘の日々

    ──そして、36thシングルの表題曲「TESTAMENT」は『戦姫絶唱シンフォギアAXZ』のOPテーマで。オーケストラとデジロック、オペラのようなコーラスもすごすぎて笑ってしまいました。

    「ですよね。レコーディングで1テイク目を録り終えた時もブースの向こうでスタッフが大爆笑してました。“女子が歌う曲じゃないよね。あはは”と。それを歌う私はいったい何なんだ?と思いましたけど(笑)。MVは教会で撮影して、白ナナと黒ナナ、ふたりのナナが対峙して歌い上げる、インパクトのある映像になっています。」

    ──頭から全力疾走してる感じですね。

    「戦闘シーンで歌う劇中歌もどんどん派手になっているので、それを総括する主題歌となるとこれくらいパワーがないと!」

    ──ブログでは“殺人級”と評していましたが。

    「トリプルSのさらに上をいきました(笑)。技術的な難易度は「Vitalization」が1番ですが、でもこの壮大なオケに負けないエネルギーで、ひと言ひと言に込める感情は、ただエモなだけではなく、まるで歌劇のように表情を作っていかなければいけない。腹筋でグッと支えながら、声量も出して…それもただストレートに出すだけではない、表現を操るとても難しいレコーディングになりました。まさしく“絶唱モード”でないと歌えない曲です。アニメの第1期で目から血を流して絶唱したシーンを思い出します(笑)。」

    ──ライヴの時の演出が楽しみになりますね。今までは空を飛んで歌ったりとかありましたが。

    「いろいろやらせていただきました! 巨大ロボットや恐竜にも乗って、小林幸子様にもなりました(笑)。巨大な何かだけでは、同じパターンになってしまうので、新たな切り口を考えたいです!」

    ──カップリングの「ACROSS」は、スマートフォン向けアプリケーション『テイルズ オブ アスタリア 追憶の楽園(エデン)』のテーマソングですが。

    「作詞作曲が吉木絵里子さんで、吉木さんは普段作曲がメインなのですが、今回デモで1コーラスだけ仮歌詞を書いてくださっていて。それが「テイルズ」シリーズの世界観とぴったりだったので、ぜひ続きを書いてほしいとお願いしました。そうしたら吉木さん、“私、2番以降を書いたことがないの!”と。“では、一緒に頑張りましょう!”と、私が演者として参加しているからこその感情や、知っている限りのテイルズの世界観を吉木さんにお伝えして、一緒に言葉を吟味しながら制作しました。ゲームで流れているのは1コーラスだけなので、ゲームをプレイされている方もぜひCDで、渾身のフルコーラスを聴いていただきたいです。」

    ──そして、3曲目の「ファンタズム」はピアノがメインのサウンドで、ちょっとおしゃれな雰囲気もあって。

    「『NEOGENE CREATION』制作時に出会っていた曲で、作詞作曲の加賀山長志さんは初めましての方なのですが、なんと私と同じ愛媛県の出身なんです! 曲中に語りがあるのですが、声優だからこそ、これまでやってこなかった手法で。そこにあえて挑戦してみたいと思いました。ピアノの音色を中心にした、とてもシンプルな構成のバンドサウンドなのですが、疾走感がありつつも、どこかもがいているような、グルグルとループしているような不思議な空気感がとても面白くて。このシングルにはとても濃い2曲が揃ったので、3曲目はこれまでと違う個性を持った曲を選びました。」

    ──歌詞は未来世界の物語のような感じですね。

    「ちょうど私が77歳になる40年後のお話です。きっと40年後はバーチャルの世界が現実との境界が分からなくなるくらいリアルになっているかもしれなくて、その怖さを歌っています。現実で上手くいかず、バーチャルの世界に逃げ込んだ時、本当に自分は何がしたいのか? 逃げてばかりでいいのか?と悩む葛藤を描いています。一歩踏み出そうかな、でもやっぱり楽にいたいと、現実とバーチャルを行ったり来たりしているイメージです。でも、もしかしたら主人公は人間じゃなかったのかも?…とも捉えられるように、中性的な感覚で歌っていますね。」

    ──《映るボクハダレダ?》というところですね。

    「もしかしたら人間になりたいけどなれないアンドロイドかも?みたいな感覚もあったり、もともと人間だったけど現実で生きることを諦めて、まるでアンドロイドのようなふりをして生きている人なのかもしれないし…。」

    ──この曲をもとにアニメか映画が作れそうですね。

    「本当にそうですね。聴いた方それぞれでシチュエーションや主人公像を想像しながら聴いていただけたら嬉しいです。」

    ──今回はシングル2枚で計6曲、アルバムか!ってくらいで。

    「全力で放出しました!!」

    ──そんな水樹さんは、今年声優デビュー20周年イヤーですが。

    「びっくりです。そんなに時間が経っていたなんて! でも、改めて振り返ると、20年では収まりきらないほどの濃厚な時間を過ごしている感覚です。幸せです。」

    ──この夏はミュージカル『Beautiful』でキャロル・キング役をされていて、20周年イヤーに相応しいチャレンジですね。

    「偶然NYでプレビュー公演を観ていた作品で、公演時期も20周年イヤーである17年の7月だったので、神様が挑戦しなさい!と背中を押してくれたのではと勝手に運命を感じています。ミュージカルをやるとは想像もしていませんでしたが、ご縁だと思って勇気を出して決めました。」

    ──でも、声優としての演技もステージもやっているわけですから。

    「いえいえ、これがもうまったく違っていて。アフレコはノイズを出さないように、身体の動きをセーブして演じるので“心は動かしても体は動かさない!”という演技を長年やってきた私としては、自然に動きながら台詞を言うことがとっても難しくて。そして、私の楽曲はハイトーンヴォイスでレーザービームのように攻めていくことが多いのに対して、キャロル・キングの曲はハスキーな低音でグルービーに、まるで喋るように表現するものが中心。自分になかった引き出しを今一生懸命見つけているところです。移動中はずっとキャロル・キングを聴いて勉強しています。みなさんに楽しんでいただけるステージを生み出せるよう、試行錯誤と奮闘の日々です!!」

    取材:榑林史章

    シングル「Destiny’s Prelude」

    2017年7月19日発売
    KING RECORDS

    KICM-1769
    ¥1,111(税抜)
    ※初回製造盤:特製カラーケース

    シングル「TESTAMENT」

    2017年7月19日発売
    KING RECORDS

    KICM-1770
    ¥1,111(税抜)
    ※初回製造盤:特製カラーケース

    水樹奈々

    ミズキナナ:声優、歌手として高い人気を誇る。声優としてのデビュー作は1997年のプレイステーション用ゲーム『NOёL?La neige?』門倉千紗都役。歌手としては2000年12月にシングル「想い」でデビュー。09年6月に発売された7枚目のオリジナルアルバム『ULTIMATE DIAMOND』で声優として初のオリコンチャート1位を獲得し、11年12月と16年4月には東京ドーム2デイズライヴも大成功に収める。また、NHK『紅白歌合戦』に6年連続で出場するなど、声優アーティストとして名実ともにトップを走り続けている。