• 【□□□】 いい大人として軽やかなものを作りたかった


【□□□】
いい大人として軽やかなものを作りたかった

L→R 村田シゲ、三浦康嗣、いとうせいこう
© music.jp


    三浦康嗣、村田シゲ、いとうせいこうからなる□□□が、the band apartが主宰するasian gothic labelに移籍し、ミニアルバム『LOVE』をリリース。これまで以上に、ポップさを前面に打ち出し、彼ららしいシニカルさも詰まった新作について、三浦に話を訊いた。

    ──今回の『LOVE』は1stアルバムのような新鮮な気持ちで制作した作品だそうですが。

    「ほんとにそうでした。俺はもともと全然努力しないタイプなんですよ。音楽を仕事にして10何年くらい、“楽しきゃいい”くらいの感じでやってきたけど、楽しさも飽きてくるというか。ちゃんとしないと面白くないなと思ってきたんです。基礎体力をちゃんと付けないとって。で、いろいろ勉強しようと思って機材買ったりしたんです。そもそも、俺、今まで機材を全然買わずにもらったもので作ってたんですよ。ちゃんと機材買ったら楽しくなってきて、それが新鮮だったんです。」

    ──機材を買い出した衝動が新鮮な気持ちだったと。ミニアルバムの全体的な印象としてはポップさがありますね。

    「軽やかですよね。“どんどん軽くなりたい”とはずっと思ってたので良かったかなと思いますね。普通に、いい大人として軽やかなものを作れないとカッコ悪いなって。俺、音楽シーンとかまったく知らないけど、年相応っていうのが今回結構ポイントだったかなって。基本、ポピュラーミュージックってユースカルチャーじゃないですか。それが良い悪いじゃないけど、それだけだと窮屈だと思うんですよ。俺は単純に軽やかなものが好きだったりもするし、軽やかなものを作れる自分でありたいとかってことだけかもしれないけど。」

    ──大人としての軽快さで作っていった?

    「別に野望ってものじゃないんですけどね。全然意識してなかったけど、俺も若い時、若さに任せたような音楽をやってたので。今そういうのをやりたいとか全然思わないし。大人としてより普通に軽やかになるべきなのかなとか、いちおじさんとしてこういう軽やかさがいいなと思ったんでしょうね。」

    ──では、曲に触れていくと、「Japanese boy」はさわやかなポップチューンですね。

    「オールディーズ的なノリで、「プリーズ・ミスター・ポストマン」的なリズムですね。」

    ──サウンド面では、生ドラムっぽいですね。

    「生じゃないんですよ。今回そういう地味なところで頑張ったんです。あれ、自分で打ち込んだんですけど、生に聴こえる精度で打ち込むみたいな。俺、誰も評価しないところを頑張るんですよ。でも、地味すぎて記事にも載らない。」

    ──いや、しましょうよ(笑)。

    「まぁ、でも精度を高めるっていうのをちゃんとやりたかったので。そういう勉強感はありましたね。」

    ──歌詞はボーイ・ミーツ・ガール的な内容で、いとうせいこうさんの語りから、三浦さんの歌メロが入るところで場面が変わりますよね。

    「これ、源氏物語なんです。サッカーって蹴鞠のことなんですよ。時代を置き換えてるんです。エキゾチックな日本昔ばなし的なものをやりたかったんですよ。源氏物語って色恋沙汰があって相手への想いを短歌で詠むじゃないですか。だから、せいこうさんがナレーター役で、サビが源氏物語で読まれるような手紙、登場人物の主観なんですよ。視点が違うんだってすぐ分かるように、《お元気ですか》って歌い出しの後ろの音を全部抜いたんです。歌詞の構造のテクニックみたいなものも勉強できたし、上手いことできましたね。」

    ──源氏物語って背景もありつつ、恋の初々しい感じが出てますよね。季節的にも、ひと夏の恋的な感じもするし。

    「そうですね。意外とラブソングですね。だから、物語を作るのがいいんでしょうね。一般的にシンガーソングライターって、自分自身とオーバーラップした歌詞を歌うところがあるじゃないですか。俺、自分が思ってることを歌にするとかに興味がないんです。架空の物語を作れるようになりたいなって思ってて、それがこの曲では面白くできたなって。」

    ──ミッドテンポのバックビート寄りなサウンドの「踊り」ですが、これだけ歌詞が英語ですね。

    「シゲが英語がいいって言うので。俺、帰国子女なんで歌詞を作りました。音楽的にはこれが一番良くできてるなって思いますね。アレンジも頑張ったし。」

    ──歌はオートチューンを使ってますね。

    「オートチューンで村田さんが歌ってます。さっきも言ったけど、俺、昔からあまり表に見えないところで頑張るんです。これも歌録りのディレクションで、シゲにやり直しさせました。結局オートチューンをかけるんですけどね(笑)。でも、だからこそ発声とリズムが大事なんですよ。」

    ──歌の素材をしっかりさせる?

    「そう。歌い方も含めてシゲと結構密に話しました。あと、ベースのアレンジとか地味なところを頑張りましたね。」

    ──ミニアルバムを作ってみて、ご自身での感想は?

    「俺、あまり物事の理由付けとか整理をしない人だから、自分でこれがどういうものなのかとかよく分からないんです。でも、軽やかな感じがいいなと思ってます。これでも重いなくらいに思ってますけど、もっと音数を減らして、音圧も下げたいですね。でも、ストイック系のものを目指したいってわけじゃないんですよ。そういう意味では、このアルバムもストイックな感じはしないと思うんですけど。あと、誰に引っかかるかどうか関係ないところで作らないと面白くないなっていうのは、すごく思いますね。」

    ──それはどういうことでしょう?

    「今って、社会的にも“音楽=お金”みたいな、昔よりも売れなきゃ意味ないって概念が強くなってるじゃないですか。しかも、それが売れてるものの後追いだったりする。それじゃあ面白くないなって。なので、□□□でのモチベーションは、無駄なこと、誰にも求められてないことを頑張ってるってところなのかなって思いますね(笑)。」

    取材:土屋恵介

    ミニアルバム『LOVE』

    2017年7月19日発売
    asian gothic label

    asg-038
    ¥1,700(税込)

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    クチロロ:1998年に三浦康嗣と南波一海でブレイクビーツユニットとして結成。以降、ターンテーブル、サンプラーを含むさまざまな楽器演奏者を交えながらライヴ&レコーディングの試行錯誤を繰り返し、徐々にポップス中心のスタイルへと移行。歌モノ、ヒップホップ、ソウル、ハウス、テクノ、音響、ジャズ、あらゆるものを聴かせつつも、その全てを今までにない、老若男女のための普遍的なJ-POPへと昇華させている。